造作キッチン、いくらかかるのか。システムキッチンとの分かれ目。

ステンレスの天板とオークの引き出しで作った造作キッチン

更新 2026.09.188分で読めます執筆:WEBライター

木の天板に、ステンレスのシンク。扉は無く、オークの引き出しが並ぶ。雑誌で見かけて、次にショールームでシステムキッチンの値札を見て、どちらにするか分からなくなる。

造作キッチンには定価が無い。幅が同じでも、天板と設備のグレードで金額は倍ほど開く。だから「相場」を調べても、自分の家の数字にはならない。

そして、造作だから高い、という決まりも無い。100万円を超えるシステムキッチンは珍しくないし、造作でも設備を絞れば同じ幅で下回ることがある。金額は、そのキッチンで何をしたいかが決まったあとについてくる。

以下、金額を決める中身、システムキッチンとの比べ方、金額より先に決めること、いまのキッチンを造作に替えるときの条件、の順に置いていく。

造作キッチンとは何か。システムキッチンとの違い

造作キッチンは、天板、シンク、水栓、コンロ、収納を、それぞれ選んで現場で組み立てるキッチンのことだ。大工が箱を作り、設備屋が水とガスをつなぐ。

対して、メーカーのショールームに並ぶ一体型が「システムキッチン」。天板から引き出し、シンク、レンジフードまで一式で、幅も255cm、270cmといった規格で決まっている。

システムは、カタログから一式を選ぶ。造作は、天板から取っ手まで一つずつ決める。自由なぶん、決める回数が多い。魅力も迷いも、ここから出てくる。

大工が作るか、家具屋が作るか

造作キッチンも、造作家具と同じで作り方が2つある。

  • 大工工事 …… 現場で大工が箱を組む。オープン棚や引き出しの少ない形に向く。安い
  • 家具工事 …… 家具屋の工房で箱を作って運ぶ。引き出しの精度や塗装の仕上がりで勝る。高い

同じ図面でも、この2つで金額が変わる。

造作キッチンは、いくらかかるのか

先に、世の中で言われている目安を並べる。出典の無い数字なので、幅として読む。実際の金額は、見積もりでしか出ない。

目安として言われている金額

  • 天板とキャビネットだけ(設備を除く) …… 45〜80万円程度と言われる
  • 設備込みの一直線のキッチン …… 80〜150万円程度
  • 対面のペニンシュラ型、アイランド型 …… 150万円を超えることも多い
  • 設備のグレードを絞れば、50万円台から作れることもある

システムキッチンは、本体だけなら50〜150万円、高いものは250万円を超えると言われる。重なる範囲が広い。だから「どちらが高い」は、中身を見るまで分からない。

費用の中身は5つ

見積もりを分解すると、次の5つになる。

  • 天板 …… 木、ステンレス、タイル、人工大理石。素材でいちばん動く
  • 箱(キャビネット) …… 大工工事か家具工事か、引き出しの数、扉の有無
  • 設備 …… シンク、水栓、コンロ、レンジフード、食洗機。メーカー品を買う
  • 設備工事 …… 給排水とガスの接続、必要なら配管の移設。電気も
  • 仕上げ …… 塗装、壁のタイル、床の補修

このうち、造作だから安くなるのは箱だけだ。設備はシステムキッチンでも造作でも、同じメーカー品を同じ値段で買う。「造作にしたのに思ったより下がらなかった」という話は、設備が金額の半分近くを占めているのが理由になる。

天板の素材サンプル。無垢のオーク、ステンレス、タイル

天板で動く金額

天板の素材で、金額と手入れの両方が変わる。

  • ステンレス …… 水と熱に強く、掃除が楽。造作でいちばん多い。バイブレーション仕上げは傷が目立ちにくい
  • 無垢の木 …… 見た目は温かい。水はねをそのつど拭く前提。オイルで年に1〜2回手入れする
  • タイル …… 熱に強く、好きな色にできる。目地の汚れは覚悟する
  • 人工大理石 …… 継ぎ目が無く、色も選べる。熱い鍋を直に置けない

木の天板にステンレスのシンクを落とし込む形は、いちばん人気があり、いちばん納まりに気を使う。木とステンレスの境目に水がたまるからだ。ここは造作洗面台の「木が腐る」話と同じで、素材ではなく納まりで決まる

システムキッチンと、どちらが安いか

「同じ幅ならシステムキッチンのほうが安い」。よく言われるし、量産品なので当たっていることが多い。

それでも造作を選ぶ人がいるのは、比べ方が一つではないからだ。

比べる相手を間違えない

キッチンの幅が280cmで、システムキッチンの規格が255cmか270cmしかない場合。残りの10〜25cmをどうするか。

隙間を埋めるパネルを付ける、端に細い収納を足す、壁を動かす。そうした「合わせる工事」を足すと、システムと造作の差は縮む。ぴったり作った造作のほうが、結局安かった、ということも珍しくない。

並べるべきは、システムキッチンの値札ではなく、それを納めるための工事まで足した合計と造作の見積もりだ。

高いシステム、安い造作

システムキッチンにも、海外メーカーやオーダー対応のものがあり、造作の何倍もする。

一方で、造作は「扉をなくしてオープン棚にする」「引き出しを減らす」「設備は普及品にする」ができる。ステンレスの天板に大工工事の箱で、システムキッチンの普及品より安く納まることがある。

どちらが安いか、は最初に決まらない。何をしたいかが決まって、はじめて金額が並ぶ。

金額より先に決めること

現場で最初に聞かれるのは、予算ではない。そのキッチンで、どう料理するかだ。

料理の仕方が、キッチンの形を決める

同じ「造作キッチンがほしい」でも、中身はまったく違う。

  • 毎日3食作る。鍋もフライパンも多い …… 引き出しを多く、天板はステンレス。設備にお金をかける
  • 週末だけ、ゆっくり作る。道具は少ない …… 木の天板にオープン棚。見た目にお金をかける
  • 人を呼んで、一緒に作る …… 対面の形。通路幅と天板の奥行を先に決める

「食洗機がほしい」も同じで、毎日回すか週に数回かで、幅45cmか60cmか、引き出し型か前開きかが変わる。形は料理の仕方から決まる。金額から入ると、安くできたのに毎日不便、という順番の間違いが起きる。

造作とシステムを、混ぜる

全部を造作にしなくていい。全部をシステムにしなくてもいい。

  • 天板と箱は造作、設備はメーカーの普及品 …… いちばん多い組み合わせ
  • シンク側はシステムキッチン、背面収納だけ造作 …… 水まわりの保証を残したい人
  • システムキッチンに、造作の木の扉だけ付ける …… 見た目を変えたい人

造作が生きるのは、規格に合わない寸法と、既製品に無い形。そこだけに使えば、予算は勝手に落ち着く。

途中のまま、相談していい

造作かシステムか決めていない。予算の当たりがつかない。木の天板に憧れるが手入れが怖い。そんな途中の状態で相談してよいのか、と手が止まる人は多い。

途中でいい。むしろ、途中の話のほうが役に立つ。

キッチンは、職人が多い

キッチン工事には、大工、設備屋、電気屋、タイル屋が順番に入る。誰をいつ入れるか、材料をいつ現場に運ぶか、その段取りを組むのが工務という役目だ。

工務が聞きたいのは、型番ではなく、「毎日3食作る」「木の天板がいい」「予算の上限はここ」といった話だ。それを材料に、造作かシステムか混ぜるか、どの設備を残してどこを削るか、職人をどう並べるか、を組む。迷いを言葉のまま出してもらったほうが、組みやすい。

開けてみないと分からない場所がある

キッチンは、水とガスと電気が一か所に集まる。いまのキッチンを外したら、排水の位置が図面とずれている。ガス管の経路が違う。壁に下地が無い。こういうことは、めずらしくない。

金額は契約前に確定させる。それは動かさない。そのうえで、ずれが出たときの逃げ道を、着工前に現場と一緒に決めておく。「排水がこの位置から動かせなければ、シンクを右に寄せる」。これを先に話してあるだけで、現場で止まる時間が減る。相談が早いほど、逃げ道を多く用意できる。

引き出しを外した造作キッチンの中。シンクの排水と給水のホース、ガス管

いまのキッチンを、造作に替える場合

読んでいる人の多くは新築ではなく、いま使っているシステムキッチンを造作に替えたい人だろう。あとから替えるときの条件を並べておく。

リノベーション前のキッチン。古いシステムキッチンの幅をコンベックスで測る

給排水とガスを、どこまで動かせるか

リフォームで、いちばん差が出るところだ。

いまのキッチンを外すと、床や壁から給水、給湯、排水、ガスの管が出ている。造作キッチンのシンクやコンロの位置を、この管の位置から大きく動かすと、配管の延長や移設が必要になり、費用も工期も増える。

特に排水管は、水を流すために勾配が要る。マンションでは床下の高さに限りがあるため、排水位置を動かせる範囲が決まっている。「シンクを窓側に寄せたい」という希望は、まず配管の位置を見てから判断することになる。

マンションでもできるか

多くの場合できる。キッチンは専有部分なので、造作に替えること自体は問題ない。

一方で、管理規約で工事の届け出が要ることがほとんどだ。ガス機器の変更、IHへの切り替えは、電気容量の確認も要る。工事できる曜日と時間帯が決まっているマンションも多い。

工事は、何日で終わるか

システムキッチン同士の交換なら、2〜3日で終わることも珍しくない。

造作の場合は、既存の撤去、配管の調整、箱の取り付け、天板の据え付け、設備の接続、仕上げ、という順番になる。1〜2週間程度は見ておいたほうがいい。箱を工房で先に作っておけば、現場での日数は短くできる。

その間、キッチンが使えない時間が出る。工事中の食事をどうするか。着工前に決めておきたいことのひとつだ。

現場で造作キッチンの箱を据える大工の手元。壁から出た給水とガスの管

まとめ

造作キッチンの費用について、ここまでの要点を並べる。

  • 天板と箱だけで45〜80万円、設備込みで80〜150万円程度と言われる
  • 費用の中身は、天板、箱、設備、設備工事、仕上げの5つ。設備は造作でもシステムでも同じ値段
  • 天板は、ステンレス、木、タイル、人工大理石で、金額と手入れが変わる
  • システムキッチンと比べるなら、納めるための工事まで含めて並べる
  • 高いシステムもあれば、安い造作もある。安いのはどちら、という答えはない
  • リフォームなら、給排水とガスの位置を先に見る

金額の前に、そのキッチンでどう料理するか。それが決まると、造作かシステムか混ぜるかが、あとから決まる。

まだ決まっていなくてもいい。途中の話を持ち込むところから、キッチンは形になっていく。

以前書いた記事です。こちらからどうぞ造作洗面台、「やめとけ」の真相。後悔する人の7つの理由。

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