造作家具で後悔する人、しない人。分かれ目は作る前にある。

壁一面の造作本棚と、その脇に置いた脚付きのサイドボード

更新 2026.09.206分で読めます執筆:WEBライター

「造作家具 後悔」で検索する人は、まだ作っていない。作りたい気持ちがあって、途中で怖くなった人だ。

後悔の声は、たしかにある。ただ、その声を一つずつ読んでいくと、理由はほとんど決まっている。しかも、そのほとんどは作る前に分かることだ。

ここでは、後悔の理由をよく聞く順に6つ並べる。次に、後悔しない人が先に決めていること。最後に、造作にする場所と置き家具に戻す場所の分かれ目。順に置いていく。

造作家具とは何か

部屋の寸法に合わせて作り、壁や床に固定する家具のことだ。壁一面の本棚、テレビボード、食器棚、玄関の靴箱。家具屋で買って運び込む「置き家具」と区別してこう呼ぶ。

造作の良さは、隙間が出ないこと、地震で倒れないこと、部屋と一体に見えること。そして後悔の理由も、ほぼ同じところから出てくる。動かせない、この一点だ。

造作家具で後悔する、6つの理由

動かせない。模様替えができない

いちばん多い後悔がこれだ。

置き家具なら、飽きたら動かせる。子どもが生まれたら配置を変えられる。造作は、壁に固定してある。テレビの位置を変えたくても、テレビボードが動かない。ソファを窓側に向けたくても、本棚が背中側で決まっている。

家具が動かないのではなく、暮らしの配置が固定される。ここを見落として作ると、数年後に効いてくる。

寸法が合わなくなる

作ったときは、ぴったりだった。

本棚の棚板を文庫本の高さに合わせたら、あとから大判の写真集が入らない。テレビボードの開口を当時のテレビに合わせたら、買い替えで一回り大きくなって入らない。ゲーム機、ルーターが増えて、配線の逃げ場が無い。

寸法を詰めるほど、寸法が変わったときの逃げが無くなる。ぴったりは、いまのぴったりでしかない

造作の棚板に文庫本はぴったり納まるが、大判の本とノートパソコンが横倒しになっている

思ったより高かった

造作は既製品より高い、と最初から分かっていて頼む人が多い。それでも後悔が出るのは、何にお金がかかっているかを知らないまま進めたときだ。

安い板にしたのに見積もりが下がらなかった。理由は、材料費より手間賃の割合が大きいから。引き出しを増やしたら金物代が跳ねた。理由は、静かに閉まるレールが1本数千円するから。この中身は、別の記事「造作家具、いくらかかるのか。」に分けて書いた。

完成まで、現物が見えない

既製品はショールームで触れる。造作は、図面と板のサンプルで決めて、できあがってから初めて見る。

「図面では良かったのに、部屋に入ったら圧迫感があった」「木の色が、サンプルの小さな板と全然違った」。壁一面の家具ほど、この差は大きい。サンプルの板は10cm角、実物は壁一面。同じ木でも、面積で印象が変わる。

壁に下地が無かった

これはリフォームで起きる。

日本の住宅の内壁は石膏ボードが多く、それ自体はビスが効かない。造作家具はその奥の柱や間柱に固定する。柱の位置と、家具を付けたい位置が合わないことがある。

そのまま付けて、数年で棚が下がってきた。あるいは、下地を足す工事が見積もりに無く、あとから追加になった。壁を開けるまで、下地の位置は分からない

壁の石膏ボードを外して現れた間柱に、造作の側板を水平器で合わせる大工の手元

引っ越しで残していく

賃貸なら最初から考えない。持ち家でも、転勤や住み替えで家を出ることはある。

造作家具は、外せば壁に穴と跡が残る。外して次の家に持っていっても、寸法が合わない。作った家に置いていくのが前提になる。それを承知で作るか、置き家具で済ませるか。ここは、作る前に一度だけ考えておく価値がある。

引っ越しの日、造作収納を外した跡の壁。ビスの穴と日焼けの跡が残っている

後悔しない人が、先に決めていること

6つの理由を並べた。裏返すと、後悔しない人は作る前に3つのことを決めている。

何を、どこに、何年しまうか

「本棚がほしい」ではなく、「文庫が300冊と、大判が20冊。5年後は倍になる」まで言葉にする。「テレビボードがほしい」ではなく、「テレビは65型。次の買い替えで75型になるかもしれない」まで。

何を、どこに、何年。この3つが言えると、棚板を固定にするか可動にするか、開口をどれだけ余らせるか、が決まる。

動かす前提の場所と、動かさない前提の場所

家の中には、10年動かさない場所がある。玄関の靴箱、洗面台の下、階段下。ここは造作が向く。

一方で、動かしたくなる場所がある。リビングのテレビまわり、子ども部屋、寝室の収納。ここは、造作にするなら可動棚にする。棚板を受けるダボ穴を32mm間隔で並べておけば、中身が変わっても棚の高さで追える。あるいは、置き家具に戻す。

造作の壁面収納。上半分は32mm間隔のダボ穴で棚板を動かせる可動棚

造作と置き家具を、混ぜる

すべてを造作にするから、動けなくなる。

  • 壁に固定する箱だけ造作。中の棚板は可動。扉は既製品を組み合わせる
  • 壁一面の本棚は造作。テレビボードは脚付きの置き家具にして、位置を変えられるようにする
  • 玄関収納と洗面台の下は造作。リビングは置き家具

固定するものと、動かすものを分ける。それだけで、後悔の6つのうち4つが消える。

決めきれないまま、聞いていい

「何年しまうか、と言われても分からない」「造作にしたいが、動かせなくなるのが怖い」「壁の下地があるかどうか、見ただけでは分からない」。そう思って、相談の前で止まる人は多い。

止まらなくていい。その分からなさこそ、先に出してほしい。

職人と材料を組む人がいる

造作家具の工事には、大工、家具屋、ときに電気屋と設備屋が入る。どの順番で誰を入れるか、板をいつ運ぶか、その段取りを組む役目を、工務と呼ぶ。

工務が最初に聞くのは、寸法ではない。「本は増えるのか」「テレビは替えるのか」「何年住むのか」だ。それが分かると、固定棚か可動棚か、造作か置き家具か、下地をどこで取るか、が組める。言葉になっていない迷いを、そのまま持ってきてもらったほうが、組みやすい。

壁の中は、開けるまで分からない

下地の位置、配線の経路、柱の太さ。図面と現場が違うことは、めずらしくない。

金額は契約の前に確定させる。その前提は変えない。そのうえで、「柱がここに無かったら、下地をこう足す」を、着工前に現場の目で一緒に見ておく。逃げ道を先に決めておけば、壁を開けたときの判断が早い。相談が早いほど、逃げ道は多く用意できる。

いまある置き家具を、造作に替える場合

新築ではなく、いまの家の家具を造作に替えたい人のために、条件を並べておく。

下地を先に見る

ここまでの話のとおり、後悔の一つは下地から出る。壁を叩いて音で探す、下地センサーを使う、コンセントの位置から柱を推定する。それでも確定はしない。見積もりに「下地補強」の一行があるかどうかを見る。

マンションの壁

住戸の内側の壁なら、原則として固定できる。外壁側と隣戸との境のコンクリート壁は共用部分で、穴をあけられないことが多い。その場合は、壁の手前に下地の壁を一枚立ててから家具を付ける。

管理規約の届け出と、工事できる曜日と時間帯。この2つは先に確認する。

外すときのことを、作るときに決める

いつか外す可能性があるなら、外しやすい作りにしておく。壁に直接ビスを打つのではなく、下地の桟を先に付けて、家具はその桟に掛ける。外すときは桟ごと外し、壁紙を貼り替えれば元に戻る。

これは造作家具の常套手段で、頼めば普通にやってくれる。頼まなければ、やらない

まとめ

造作家具で後悔する理由と、その手前でできることを並べる。

  • 後悔の理由は6つ。動かせない、寸法が合わなくなる、高かった、現物が見えない、下地が無かった、引っ越しで残す
  • 後悔しない人は、作る前に「何を、どこに、何年」を言葉にしている
  • 10年動かさない場所は造作。動かしたくなる場所は可動棚か、置き家具
  • 造作と置き家具を混ぜれば、後悔の大半は消える
  • リフォームなら、下地と、外すときの作りを先に決める

造作がいいか、置き家具がいいか、という答えは無い。固定していい場所と、動かしたい場所が、その家ごとにあるだけだ。

その分け方が、まだ見えていなくてもいい。分からないところから話せば、造作家具は後悔しない形に近づく。

以前書いた記事です。こちらからどうぞ造作家具、いくらかかるのか。費用の中身と、先に決めること。

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